履歴書の職歴欄に、私は「倒産」と書きませんでした
会社を畳むと決めたあと、私が最初に手を止めたのがここでした。
履歴書の職歴欄。ここに「倒産」と書くべきなのか。書いたら落とされるんじゃないか。かといって隠したら経歴詐称になるんじゃないか。パソコンの前で、正直かなり長い時間固まっていました。
結論から言います。私が実際に提出した履歴書の職歴欄には、「倒産」も「代表取締役」も書いていません。
こう書きました。
2010年3月 ◯◯株式会社 入社
現在に至る
これだけです。
なぜ書かなかったのか
隠したかったからではありません。履歴書と職務経歴書では、担う役割が違うからです。
履歴書 = 事実を並べる書類。いつ、どこに入って、いつ辞めたか。それ以上でも以下でもない
職務経歴書 = 何をやってきたか、そしてなぜ次を探しているかを説明する書類
倒産や廃業というのは「説明が必要な事情」です。1行しか書けない履歴書の職歴欄に押し込むと、事情ではなくただのマイナス情報として読まれます。読み手に判断材料を渡せないまま、印象だけが悪くなります。
だから私は、履歴書は事実だけにとどめ、事情は職務経歴書の冒頭で自分の言葉として説明する形にしました。
ひとつ補足:私が提出したときの会社の状態
私がこの履歴書を出したのは、会社を破産させると決めた直後でした。破産の申立てをするのは、そのあとの話です。だから当時の私にとって「破産」は事実そのもので、盛ってもいなければ隠してもいませんでした。
ここは大事なところなので、はっきり言います。書類には、提出する時点の事実を書けばいいです。
問題になるのは、事実と違うことを書いたときだけ。そして、提出したあとに状況が動いたなら——私の場合はその後に法人破産に進みました——それは面接で自分の口から伝えればいい。書類で全部を背負い込む必要はありません。
(※いつ、どこまで伝えるかは こちらに書いています→ 「破産・退職は面接でいつ伝えるか」)
すでに退職している場合の書き方
私は会社を畳むと決めた段階で、まだ在職中のまま転職活動を始めたので「現在に至る」で提出しました。
すでに退職が済んでいる方は、こう書けば十分です。
2010年3月 ◯◯株式会社 入社
2025年◯月 会社都合により退職
倒産により退職」と書いても間違いではありません。ただ、履歴書は事実欄なので、必要以上に強い言葉を選ばないほうが読み手に余計な想像をさせずに済みます。
ひとつだけ守ってほしいのは、事実と違うことは書かないということ。解散なら解散、破産なら破産です。ここで盛ったり誤魔化したりすると、面接で必ず食い違いが出ます。書かない自由はありますが、嘘をついていいわけではありません。
前職の退職理由は「一身上の都合」でいい
私の履歴書には、会社に入る前の2社分の職歴もあります。そこは全部、
”一身上の都合により退社”
と書きました。これは定型句なので、深く考えなくて大丈夫です。掘り下げられるのは直近の職歴だけです。
「代表取締役」と書かなかった理由
これは迷う方が多いと思います。私も迷いました。
履歴書の職歴欄は「所属した会社」を書く欄で、役職を書く欄ではありません。役職まで細かく書く形式もありますが、私は書きませんでした。
理由は2つあります。
ひとつは、履歴書の1行で「代表取締役」と見えた瞬間、読み手の頭が「この人は雇われる側になれるのか?」という警戒モードに切り替わってしまうこと。これは実際に、私自身が採用する側だったときにも感じていた感覚です。
もうひとつは、経営していた事実は職務経歴書で堂々と書けるからです。順番の問題であって、隠すという話ではありません。実際、私の職務経歴書には経営していたことも、会社を畳む判断をしたことも、はっきり書いています。
資格・本人希望欄はどうしたか
資格欄には、経営とは直接関係のない現場系の資格(運転免許のほか、製造現場で取った国家資格2つ)をそのまま並べました。元社長という肩書きの隣に、現場の資格が並んでいる。これが意外と効きます。「この人は現場もやる人だ」という無言のメッセージになるからです。
本人希望記入欄は、一行だけ。
”その他については、貴社の規定に準じます。”
元経営者は、ここで条件を細かく書きたくなります。でも書けば書くほど「まだ社長のつもりでいる」と読まれます。
倒産経験者は職務経歴書をどう書くか
転職活動を始めたとき、私が悩んだことのもう一つが職務経歴書をどう書くかでした。
「会社を倒産させた事実を、どう書けばいいのか」
「破産って、正直に書いたら一発で落とされるんじゃないか」
そう悩む方は多いはずです。私もそうでした。結論から言うと、書き方しだいで、倒産経験は”マイナス”にも”独自の強み”にもなります。
この記事では、私が実際に転職エージェントと一緒に作り上げた職務経歴書をもとに、倒産経験をマイナスにしない5つの工夫を公開します。
工夫①:退職理由に「破産」と書かない
これが一番大事です。私は退職理由に「破産」「倒産」という言葉をあえて使いませんでした。
代わりに使ったのは、こういう表現です。
「深刻な人手不足により、会社を解散することにしたため、これまでの経験を活かせる職種を中心に転職活動中」
ポイントは嘘をつかず、事実を中立・前向きに表現すること。「破産」と書くと相手は身構えますが、「人手不足による解散」なら、事実でありながら、ぐっと印象が柔らかくなります。
※もちろん、面接の最終段階では破産の事実もきちんと伝えました。書類で全部さらけ出す必要はなく、段階に応じて伝えるのが現実的です。
工夫②:職務要約で「横断的な経験」を強みに変える
経営者の強みは、一つの業務だけでなく、事業全体を見てきたことです。私は職務要約で、それを前面に出しました。
「仕入れから製造、販売、営業まで一連の業務を担当。役職就任後は、経営改革や新規事業(直営店舗)の立ち上げにも携わった」
倒産の事実から書き始めるのではなく、まず”何をやってきた人か”を見せる。 経営者は、普通の社員が経験できない範囲を見てきています。それは立派な武器です。
工夫③:「活かせる経験・スキル」を箇条書きで見せる
採用担当は、職務経歴書を隅々まで読みません。だから冒頭に、持ち運べるスキルを箇条書きで並べました。
- 仕入れから販売まで一連の業務に携わった経験
- 製造工程の見直し・効率化、新規事業の立ち上げ経験
- 現場・店舗のチームマネジメント
- SNSやWebを使ったマーケティング
- 設備・機械のトラブル対応・問題解決
実務スキルは職種が変われば活きにくいですが、「マネジメント」「問題解決」「全体を見る力」は、どの会社でも通用する。ここを目立たせるのがコツです。
工夫④:実績は、必ず「数字」で書く
「頑張りました」では伝わりません。数字に置き換えると、説得力が一気に増します。私が書いた実績の例です。
- 製造工程を見直し、燃料コストを約3割削減
- 製造にかかる人員を約半分に効率化
- 経営悪化時、工程見直しと価格交渉で翌年に黒字転換
- SNS・Web集客に注力し、フォロワーを大きく伸ばし、地域で高い評価を獲得
倒産はしましたが、その過程でやり遂げた改善は、紛れもない成果です。堂々と数字で示しましょう。
工夫⑤:自己PRは「雇う側・雇われる側の両方を経験した」独自性で締める
最後の自己PRで、私は経営者ならではの視点を打ち出しました。
「雇用する側・される側の両方を経験し、それぞれの立場のリスクや、どうすれば全員が同じ方向を向けるかを考え実践してきた。その経験を、より大きな組織で活かしたい」
これは、普通の転職者には書けない一文です。倒産という経験があるからこそ言える言葉を、最後に置く。これが効きました。
プロに添削してもらって、こう変わった
正直に書くと、この職務経歴書は自分一人では作れませんでした。
最初に自分で書いた原稿は、つい倒産の経緯を長々と説明してしまい、暗い印象になっていました。それを転職エージェントの担当者が、
- 退職理由を「破産」→「人手不足による解散」へ
- 実績を曖昧な文章→数字へ
- 経歴の羅列→「活かせるスキル」を先頭に
と、採用担当に響く形に整えてくれたのです。倒産経験という”クセのある経歴”を、客観的にどう見せるか。これは自分では絶対に気づけませんでした。
まとめ:倒産は、書き方しだいで武器になる
履歴書と職務経歴書で大切なのは、倒産を隠すことでも、卑下することでもありません。事実を前向きに表現し、そこでやり遂げた成果と、経営者だからこそ得た視点を、堂々と見せることです。
私の職務経歴書は、冒頭の「職務要約」の最後を、こう締めています。
深刻な人手不足により、会社をたたむことにしたので、これまでの経験を活かしつつ、よりチャレンジできスキルアップできるよう考えながら転職活動中です。
たった一文です。でもこの一文に、言い訳をしない/後ろ向きに終わらない/次につなげるという、私が伝えたかったことを全部入れました。
会社をたたんだ経験は、決してマイナスだけではありません。書き方しだいで、あなたにしかない説得力になります。一人で抱え込まず、客観的なプロの目も借りながら、自信を持って次の一歩を踏み出してください。
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会社を畳むと決めた社長へ〜破産・廃業・再出発の全手順
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【この記事を書いた人】 元・中小企業経営者(従業員十数名)。経営悪化と人手不足により会社を廃業。法人破産・経営者保証ガイドラインを経て、現在はサラリーマンとして再出発。「自分と同じ規模の社長の体験談が見つからなかった」という経験から、このブログを書いています。


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