はじめに
会社をたたんだあと、再就職に向けて動き出したとき、私は転職エージェントを使いました。
結論から言うと、使って正解でした。ただ、やみくもに勧めたいわけではありません。私には少し変わった経歴があります。人を採用する側(経営者)と、転職を支えてもらう側(求職者)の、両方の立場を知っているのです。
だからこそ言える、正直な話をします。
そもそも、なぜ使おうと思ったのか
エージェントの存在を知ったのは、求職者としてではなく、経営者として求人を出すときでした。
20年ほど前、自分が新卒だった頃は、転職エージェントなんて知りませんでした。でも会社を経営していると、人を採る必要が出てくる。いろいろ調べるうちに、求職者に伴走し、その人の強みと企業のニーズをマッチさせるエージェントという存在を知りました。
採用する側から見ると、「いい人材に出会える可能性が高い仕組みだな」と感じました。ただ、当時の私は採用費用の高さがネックで、結局は使いませんでした。 求人は自分たちで出す、またはハローワークや地元のフリーペーパー、SNSを使うという選択をしていたのです。
ところが、自分が求職者側に回ってみて、印象が180度変わりました。求職者にとっては、ミスマッチを防げて非常に合理的。しかも費用はほとんどかからない(多くは企業側が負担するため)。あのとき使わなかった側の仕組みが、こんなに心強いものだったのか、と。
使ってよかったこと①:一人では絶対にたどり着けない情報
一番大きかったのは、情報です。
いまの転職市場がどうなっているか。自分のこれまでのキャリアが、どの分野で、どう活かせそうか。こうした情報は、一人で調べていたら、まずたどり着けなかったと思います。
倒産直後というのは、視野が狭くなりがちです。「自分に市場価値なんてあるのか」と後ろ向きになる。そんなとき、客観的に「あなたのこの経験は、こういう業界で評価されますよ」と示してもらえたことは、精神的にも大きな支えでした。
使ってよかったこと②:破産の経歴が「どう強みになるか」を言語化してくれた
倒産を経験した人が一番不安なのは、「会社を破産させた経歴が、マイナスにしか見られないのでは」という点だと思います。私もそうでした。
ここで効いたのが、数百社を見てきたエージェントの目線です。
担当者は、「会社経営から破産を経験したあなたが、サラリーマンとして具体的にどう活きるか、どう会社に貢献できそうか」を、採用市場を知る立場から言葉にしてくれました。自分では”傷”だと思っていた経歴が、見方を変えれば”強み”になる——それを、実際の企業ニーズと結びつけて示してもらえたのです。
これは、一人で悩んでいたら絶対に出てこない視点でした。
使ってよかったこと③:企業が「最初から真摯に」向き合ってくれた
これは、人を採用する側を経験したからこそ、腑に落ちたことです。
信頼できる相手からの紹介というのは、受け取る企業側の姿勢を変えます。採用する立場だった頃を思い返すと、素性の分からない応募より、信頼できるルートから「この人は」と推される人材の方が、最初から真剣に向き合いたくなる。これは間違いありません。
エージェントからの紹介も、まさにこれだと感じました。倒産という重い背景があっても、門前払いではなく、きちんと人物を見てもらえた。採用する側の心理が分かるからこそ、この”紹介の重み”は実感できました。
もちろん、面接対策や、破産の伝え方の整理など、実務的なサポートも大いに役立ちました。
正直に言う:エージェントでも解決しなかったこと
逆に、エージェントといえども万能ではないので、こちらの希望が全て叶うわけではありません。
私は本当は、新卒で入社した業界にもう一度戻りたかった。でも、これまで積み重ねてきたキャリアからは、その業界への転職は難しいと、はっきり言われました。
これは、エージェントの力でどうにかなる話ではありません。市場の現実です。むしろ、変に期待を持たせず正直に伝えてくれたことは、誠実だったと今は思います。
つまりエージェントは、魔法ではありません。 できないことはできないと教えてくれる。その上で、実現可能な最善の道を一緒に探してくれる存在です。
倒産経験者にとって、特に大きいメリット
倒産・破産を経験した人にとって、エージェントを使う意味は、普通の転職より大きいと感じます。
- 破産の事実を、一人で抱えなくていい(どう伝えるか一緒に整理してくれる)
- 退職理由を、企業に中立的に説明してくれる(自分で一から弁明せずに済む)
- 後ろ向きになりがちな時期に、客観的な視点をくれる
倒産直後は、誰かが間に立ってくれるだけで、心の重さがまるで違います。
逆に、エージェントが要らない人もいる
正直に言うと、全員に必要とは思いません。
例えば、自分に明確な特殊スキルがあって、それを活かせる業種・業界を自分で熟知していて、年収もその相場から自分で交渉できる——そういう人なら、エージェントを通さなくても、面接官に直接その価値は届くと思います。
つまり、「自分の市場価値と行き先が、自分ではっきり見えている人」は、無理に使わなくていい。
逆に言えば、私のように「倒産直後で視野が狭くなっている」「自分の経歴がどう評価されるか分からない」という状態の人ほど、伴走者がいる意味は大きい、ということです。
まとめ:迷っているなら、一度使ってみていい
採用する側も、される側も経験した私の結論はこうです。
費用はほとんどかからず、ミスマッチを防げて、情報も得られる。倒産経験者ほど、使う価値は大きい。
ただし、魔法ではありません。志望が必ず叶うわけではないし、最終的に受けるかを決めるのは自分です。それでも、一人で抱え込むより、伴走者がいた方がずっと前に進めます。
もし今、使うか迷っているなら、まずは登録して話を聞いてみるだけでも、視界が変わると思います。
面接で実際に聞かれた質問はこちら↓
→ 元社長が転職面接でよく聞かれた5つの質問と回答
破産のことを面接でいつ伝えるかはこちら↓
→ 破産・退職は面接でいつ伝えるか
倒産から再就職までの全体像はこちら↓
→ 会社を畳むと決めた社長へ
【この記事を書いた人】 元・中小企業経営者(従業員十数名)。経営悪化と人手不足により会社を廃業。法人破産・経営者保証ガイドラインを経て、現在はサラリーマンとして再出発。「自分と同じ規模の社長の体験談が見つからなかった」という経験から、このブログを書いています。
コメント