この記事では、廃業と法人破産の違いをお伝えします。「会社を閉めること」を検討している経営者の方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
「廃業」と「法人破産」は何が違うのか
まず言葉の整理をします。
廃業とは、借金をすべて返済できる状態で会社を閉めることです。資産を売って負債を清算し、残った財産を株主に分配して終了します。「きれいに終わらせる」手続きです。
法人破産とは、借金を返せない状態で、裁判所の手続きを通じて会社を終わらせることです。残っている財産を債権者に分配しますが、全額返せなくても手続きが完結します。「払えないことを法的に確定させる」手続きです。
つまり、廃業は「負債をゼロにできる会社がやるもの」、法人破産は「負債をゼロにできない会社がやるもの」と理解すると、わかりやすいかもしれません。
廃業で終わらせるために必要なこと
廃業(正確には「解散・清算」といいます)を選ぶには、最終的にすべての債権者に全額返済できることが条件です。
具体的には以下のようなものを全額払い切る必要があります。
- 金融機関への借入残高
- 取引先への未払い金
- 未払いの税金・社会保険料
- 従業員への退職金・未払い給与
これらを全部返したうえで、余れば株主に返す。余らなくてもゼロになれば廃業として完結します。
しかし、返せない負債が残る場合は廃業を選べません。「廃業します」と言っても、借金は消えないからです。
私が破産を選んだ決め手
私の場合、答えはシンプルでした。
債権者に完済するための原資が、どこにもなかった。
会社の資産を全部売っても、借入残高には到底届きませんでした。在庫・設備・車両・預金、洗いざらい出したとしても、焼け石に水です。
経営者保証(個人保証)があったため、法人だけでなく私個人の資産も関係してきます。しかし、それを足しても全額返済は不可能でした。
廃業は「払える人が選ぶ手続き」です。払えない私には、その選択肢がありませんでした。
弁護士からも「この状態では廃業(清算)はできません。法人破産の手続きをとることになります」とはっきり言われました。
「破産=逃げ」ではない、という話
正直に言うと、最初は「破産」という言葉に強い抵抗がありました。
祖父の代から続く会社を、破産で終わらせる。その響きが、まるで自分が失敗者の烙印を押されるように感じていました。
でも、弁護士と話を重ねるうちに、考えが変わっていきました。
法人破産は「逃げ」ではありません。払えない状態になったとき、法律が用意している正規の出口です。
むしろ、払えないのに曖昧なまま引き伸ばす方が、関係者全員を不幸にします。従業員への給与が滞り、取引先への支払いが止まり、誰も得しない状況が続く。
破産手続きをとることで、債権者への配当を法的に確定させ、経営者個人も過去の保証債務から解放される道筋が見えてきます。
これは「逃げ」ではなく、「終わらせる責任」だと、今は思っています。

法人破産を選んで、実際にどうなったか
手続きに入ってからは、弁護士が窓口となって債権者との交渉を一括して引き受けてくれました。私が直接、銀行や取引先に頭を下げに行く必要はありませんでした(もちろん誠意として挨拶に行った先もありますが)。

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裁判所に破産申立てを行い、破産管財人が選任されました。会社の財産はすべて管財人が管理し、債権者への配当として分配されます。
私自身は、代表取締役としての職務から外れ、手続き中は管財人の調査に協力する立場になりました。
全額は返せませんでしたが、法的に整理されたことで、債権者も「これ以上請求できない」状態になります。会社としての法人格は消滅し、すべてが終わります。
長かった、と思いました。でも、ようやく終わった、とも思いました。
経営者個人への影響はどうだったか
法人破産に合わせて、私は「経営者保証ガイドライン」に基づく処理を行いました。
これは、経営者個人が会社の保証人になっている場合に、自己破産をせずに個人保証の問題を解決できる制度です。すべての経営者に適用されるわけではありませんが、一定の条件を満たせば、手元に生活費や就職活動のための資産を残しながら、保証債務を整理できます。
私はこの制度を活用し、個人破産を回避することができました。
「法人破産をしたら、個人も全部終わり」と思っていましたが、実際はそうではありませんでした。経営者保証ガイドラインの存在を知らずに、不必要に個人破産まで選んでしまう経営者の方もいると聞きます。この制度については、ぜひ弁護士に相談してみてください。
同じ状況の方へ伝えたいこと
「廃業したいが、借金が残る」という状況にいる方に、伝えたいことがあります。
廃業と破産のどちらが自分に当てはまるのかは、自分一人では判断できません。資産と負債の状況、保証の内容、税金の滞納額など、複数の要素を専門家が整理して初めてわかります。
「破産になるかどうか」は、弁護士に相談して初めてわかることです。相談したから即座に破産手続きが始まるわけではありません。まず話を聞いてもらうことから始めてください。
私が後悔しているのは、「払えているうちに相談しなかった」ことです。早く相談していれば、もっと多くの選択肢があったかもしれません。

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【この記事を書いた人】
元・中小企業経営者(従業員十数名)。 経営悪化と人手不足により会社を廃業。
法人破産・経営者保証ガイドラインを経て 現在はサラリーマンとして再出発。
「自分と同じ規模の社長の体験談が見つからなかった」 という経験から、このブログを書いています。
より詳しい体験談はnoteでも書いています。

小さな会社を破産させると決めたときの具体的な流れはこちらに書いています。

本記事は、筆者の実体験をもとにした情報提供を目的としています。個別の法的判断については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。

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