「会社が破産したら、社長個人はどうなるのか」
中小企業の社長にとって、これほど切実な問いはないと思います。経営が苦しくなって調べ始めた時、私自身が最も知りたかったのも、まさにこの一点でした。
「会社の借金は会社の借金」と頭ではわかっていても、現実は違います。ほとんどの中小企業では、社長個人が連帯保証人になっています。会社を破産させても、その瞬間に借金が個人に回ってくる仕組みです。
この記事では、法人破産と個人破産の違いを整理した上で、連帯保証人になっている社長が取れる3つの選択肢について書きます。私自身は、法人破産と経営者保証ガイドライン(個人の連帯保証分の整理)の両方を経験しました。その当事者として、各選択肢のリアルな違いを解説します。
※「破産」と「倒産」という用語の違いについては、別の記事で詳しく解説しています。
▶【会社を畳むと決めた社長へ〜破産・廃業・再出発の全手順】

法人破産と個人破産は別の手続き
まず大前提として、法人破産と個人破産は完全に別の手続きです。
法人破産は会社という法人格に対する手続き、個人破産は個人に対する手続きです。それぞれ別の申立を行い、別の弁護士費用がかかります。
ここで多くの社長が誤解するのが、「会社が破産すれば、自分の借金もなくなる」という考えです。これは間違いです。会社の借金に対して社長個人が連帯保証人になっている場合、会社の破産だけでは個人の保証債務は消えません。会社が払えなくなった分は、連帯保証人である社長個人に請求が来ます。
つまり、社長個人としても、何らかの形で借金を整理する手続きが必要になります。
連帯保証人になっている社長の3つの選択肢
会社の破産が決まり、個人の連帯保証分をどう処理するか。社長が取れる選択肢は基本的に3つです。
私自身も弁護士から、この3つを提示されました。
選択肢1:個人で全額返済
会社の借入金を、個人の資産で全額返済する方法です。
理屈としては最もシンプルですが、現実的にはほとんど不可能です。中小企業の借入金は数千万円〜数億円規模が一般的で、社長個人の資産で全額カバーできるケースはまれです。
私の場合も、この選択肢は早い段階で除外しました。仮に全額返済できる資産があれば、そもそも会社を破産させる前にその資産で会社を立て直せたはずだからです。
選択肢2:自己破産(個人破産)
個人としても破産手続きを行い、すべての借金を法的に免除してもらう方法です。
自己破産の特徴:
- 99万円以下の現金と、生活に必要最低限のもの以外は処分される
- 信用情報に「事故情報」として登録され、いわゆるブラックリスト状態になる(5〜10年)
- クレジットカードの利用・新規作成ができなくなる
- 住宅ローンや自動車ローンを組むのに支障が出る場合がある
- 賃貸住宅を借りる際に保証会社の審査が通りにくくなる場合がある
「すべての借金から解放される」という強さがある一方、生活への影響は大きいです。再出発の際に、信用情報の制約が数年間ついて回ります。
選択肢3:経営者保証ガイドライン(私が選んだ方法)
会社の借金に対して連帯保証した部分だけを整理する制度です。私はこの方法を選びました。
経営者保証ガイドラインの特徴:
- 個人で組んだ住宅ローン・自動車ローンなどは対象外(つまり残る)
- 99万円以下の現金と、初年度登録から5年を超えた車などは残せる場合が多い
- 信用情報に影響しない場合がほとんど
- クレジットカードを今後も使える可能性が高い
- 法的強制力はないが、金融庁が推進しており、ほとんどの金融機関が応じる
「会社の借金だけを清算して、個人として再出発したい」人に向いている方法です。
私が経営者保証ガイドラインを選んだ理由
弁護士から3つの選択肢を提示された時、私は経営者保証ガイドラインを選びました。理由は3つあります。
理由1:信用情報を残せること
サラリーマンとして再出発する以上、クレジットカードや住宅ローンが将来必要になる場面は必ず来ます。信用情報がブラックリスト状態だと、5〜10年は再出発の選択肢が制約されます。経営者保証ガイドラインを使えば、その制約をほぼ受けずに済みます。
理由2:個人としての借金が少なかったこと
私の場合、会社の借入金以外に大きな個人の借金はありませんでした。住宅ローンも組んでいなかったので、整理が必要なのは会社の連帯保証分だけ。だったら経営者保証ガイドラインで連帯保証分だけを整理する方が、生活への影響が最小限になります。
理由3:弁護士が「あなたの状況なら使えます」と言ってくれた
最終的に決め手になったのは、弁護士の助言でした。私の財務状況を見た上で「経営者保証ガイドラインが使える状態だと思います」と言われました。専門家がそう判断する根拠があったので、安心して選べました。
経営者保証ガイドラインの詳細とメリットは、別の記事に書いています。
▶【経営者保証ガイドラインを選んでよかったと思った3つの理由】

経営者保証ガイドラインの注意点
ただし、この制度には注意点もあります。
すべての弁護士が対応できるわけではない
経営者保証ガイドラインは比較的新しい制度です。「会社の破産は得意だけど、経営者保証ガイドラインの実績は少ない」という弁護士も実際にいます。私が紹介された弁護士は両方に対応できる方でしたが、これは運が良かった部分もあります。
弁護士を選ぶ際は、「経営者保証ガイドラインの対応経験はありますか」と最初に聞くことをおすすめします。
すべての金融機関が応じる保証はない
法的強制力のない制度なので、理論上は金融機関が拒否することもあり得ます。実際にはほとんどの金融機関が応じてくれますが、ゼロではありません。
資料準備が大変な側面もある
家計収支の記録を毎月つけて提出する必要があります。私の場合、何ヶ月もこれを続けました。「個人で生活を維持できる」ことを債権者に証明するための作業です。地味ですが、これが制度を使うための重要な手続きです。
自己破産と経営者保証ガイドラインで迷ったら
私の経験から、判断の目安を整理します。
経営者保証ガイドラインを検討すべき人
- 個人で住宅ローンを組んでいる
- クレジットカードを今後も使いたい
- 信用情報への影響を最小限にしたい
- 会社の連帯保証以外に大きな個人の借金がない
- サラリーマンとして再出発する予定がある
自己破産を検討すべき人
- 個人としても多額の借金がある
- できるだけ早く手続きを終わらせたい
- 信用情報への影響よりも、借金からの完全な解放を優先したい
ただ、これはあくまで一般論です。実際にどちらが合うかは、個人の財務状況・家族構成・将来設計によって変わります。最終的には弁護士と相談して決めることになります。
「夜逃げ」という選択肢は取らないでください
弁護士費用が払えない、手続きが面倒、という理由で「夜逃げ」を考える方もいます。
これは絶対に避けてください。夜逃げをしても借金は消えません。むしろ社会保障も受けられなくなり、就職も難しくなります。
▶【夜逃げの末路】

弁護士費用は数十万円かかりますが、適切な手続きを取れば、必ず再出発の道が開けます。
どちらを選ぶにせよ、弁護士相談が最初の一歩
法人破産と個人の整理(自己破産または経営者保証ガイドライン)は、どちらも自分一人で判断できる話ではありません。
私自身、最初に弁護士に相談に行った時、3つの選択肢を提示されて初めて「自分にはこんなに選べる道があったのか」と知りました。それまでは「破産=自己破産」しか頭にありませんでした。
専門家に相談することは、終わりではなく、選択肢を知るための第一歩です。
会社の借金が払えなくなったと感じた段階で、まず何をすべきかは、こちらにまとめています。
▶【会社の借金が払えなくなったとき、社長が最初にすべきこと】

💬 法人の借金、個人への影響、まず話だけでも
私が弁護士に相談したのは「もう限界」という状態になってからでした。もっと早く相談していれば、選べた選択肢があったかもしれません。
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まとめ
法人破産と個人破産は別の手続きです。会社の借金に連帯保証人になっている社長は、会社の破産とは別に、個人としての整理が必要になります。
選択肢は基本的に3つ。個人で全額返済(多くの場合不可能)、自己破産、経営者保証ガイドラインです。
私の場合は経営者保証ガイドラインを選びました。サラリーマンとしての再出発を考えた時、信用情報を残せることが大きな決め手になりました。
ただ、どちらが合うかは状況によって変わります。弁護士に相談すれば、自分の状況に合った選択肢が見えてきます。
「会社が破産したら、自分はどうなるのか」という不安は、選択肢を知ることで小さくなります。早く動けば、選べる道は多くなります。
【この記事を書いた人】 元・中小企業経営者(従業員十数名)。経営悪化と人手不足により会社を廃業。法人破産・経営者保証ガイドラインを経て、現在はサラリーマンとして再出発。「自分と同じ規模の社長の体験談が見つからなかった」という経験から、このブログを書いています。
より詳しい体験談はnoteでも書いています。



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